事故で車を預けることになったとき、多くの方が最初に気にされるのが「修理のあいだ、車はどうすればいいのか」という点です。修理工場の代車を借りるのか、レンタカーを手配するのか。そして、その費用は誰が持つのか。
この話は、実はふたつの別々の問題が重なっています。ひとつは「借りた車を運転しているあいだの補償」、もうひとつは「代車にかかった費用の負担」です。前者は他車運転危険補償特約、後者は契約している特約や相手方への損害賠償の話で、根拠がまったく違います。この記事では、日本損害保険協会が公表している一般的な説明をもとに、両者を分けて整理します。
先に結論:代車の話は「運転」と「費用」に分けて考える
整理すると、確認すべきことは次の2点に集約されます。
| 分けて考える点 | 関係するもの | 確認先 |
|---|---|---|
| 借りた車を運転しているあいだの補償 | 他車運転危険補償特約 | ご加入の保険会社 |
| 代車にかかった費用の負担 | ご契約の特約/相手方への損害賠償 | ご加入の保険会社 |
どちらも最終的には契約内容によって決まります。工場側で判断できることではないため、修理を依頼される前に保険会社へご確認いただくのがいちばん確実です。当店の場合は工場代車のご用意が基本で、ご利用には他車運転特約が付いていることが必要になります。
他車運転危険補償特約とは何か
誰が運転したとき、何が補償されるのか
日本損害保険協会「損害保険Q&A」問18は、任意の自動車保険の主な特約を一覧で示しています。そのなかで他車運転危険補償特約は自動付帯特約として挙げられており、保険金を支払う場合は「記名被保険者、その配偶者、同居または別居の未婚の子が他人の自動車を運転中の事故」と説明されています。
支払われる保険金については、「対人賠償責任・対物賠償責任・人身傷害保険(または自損事故保険や無保険車傷害保険)に準じる」とされています。
ここは読み飛ばされやすいのですが、実務の相談で行き違いが起きやすい大事な点です。この一覧に車両保険は挙げられていません。つまり、借りた車そのものに生じた損害がどう扱われるかは、この説明からは読み取れません。「代車をぶつけても保険で直る」と思い込まずに、借りた車自体の損害の扱いを保険会社に確認しておくことをおすすめします。
保険金が支払われない主な場合
同じ問18は、被保険者自身が被った損害または傷害について、保険金が支払われない主な場合として次のような事故を挙げています。
- 被保険者の使用者の業務のために、その使用者の自動車を運転中の事故
- 被保険者が役員となっている会社の自動車を運転中の事故
- 被保険者が、他人の自動車の使用について、承諾を得ないで運転中の事故
- 競技・曲技もしくは試験のために運転中の事故
もうひとつ、「自動車の修理、保管、給油、洗車、売買、陸送、賃貸、運転代行等自動車を取扱う業務として受託した他の自動車を運転中の事故」も挙げられています。これは自動車を取扱う業務として車を預かった側についての記述で、お客様が代車を借りて使う場面とは別の話です。混同されやすいので補足しておきます。
そして問18には、特約全体について次の但し書きが置かれています。
ただし、すべての保険会社で取り扱っているわけではありませんし、内容も異なることがありますので、詳しくは保険会社または代理店に問い合わせることが必要です。
代車の費用は誰が負担するのか
費用の側は、また別の考え方になります。同じ「損害保険Q&A」の問46は、修理期間中の代車費用について次のように述べています。
事故により自動車が使えない期間中、やむを得ず代わりの自動車を借用した場合の費用は、損害賠償請求できます。
ただし、そのあとに重要な限定が続きます。相手方に請求できるのは、代車費用が不法行為責任における「損害」にあたると認められる場合に限定される、とされています。根拠として民法第709条(不法行為による損害賠償)が挙げられています。実際に費用が生じたことが前提であり、代車を使ったら自動的に相手が払う、という仕組みではありません。
認められた例・認められなかった例
問46は、判断の目安として具体例を挙げています。
| 代車費用が認められた例 | 認められなかった例 |
|---|---|
| 修理により使えなくなっている自動車が普段通勤に使用していたものであり、他に電車やバスなどの通勤手段がない場合 | 修理により使えなくなっている自動車が普段通勤に使用しているものであったが、他にも自動車を所有していた場合 |
| 自動車を利用して事業を営んでおり、他の所有自動車でカバーすることもできず、当該自動車が使用できなければ営業損害が発生する場合 | 月に1度程度しか自動車に乗っていなかった場合 |
並べてみると、その車がなければ本当に困るのかどうかが軸になっていると分かります。通勤に使っていたという事情ひとつでも、他に車があるかどうかで結論が変わっています。
自分の契約で代車費用をまかなえる場合もある
相手方への請求だけが道ではありません。問46は続けて、次のように案内しています。
相手方からの損害賠償金だけでなく、被害者自身が契約している自動車保険で代車費用を補償できる場合もありますので、被害者側の保険会社に契約内容を確認する必要があります。
これは一般に、レンタカー費用や代車費用にあたる補償と呼ばれるものです。名称も内容も契約によって異なり、付いていない契約もあります。相手方への請求が難しいケースでも自分の契約でまかなえることがありますので、事故の連絡をする際にあわせて聞いておくと二度手間になりません。
ケース別に、何を確認しておくとよいか
- 相手がいる事故で、自分に過失がないとき…代車費用を相手方へ請求できるかは、上の「損害」にあたるかどうかで判断されます。通勤や仕事で日常的に使っていた事情は、早い段階で伝えておくと話が進みやすくなります。過失の割合がつく場合の考え方は過失割合が10対0でないときの修理で整理しています。
- 自分にも過失があるとき…相手方から出る金額は、過失の割合に応じて差し引かれるのが一般的です。具体的な割合は事故の状況によりますので、ご加入の保険会社にご確認ください。自分の契約に代車費用の補償が付いているかどうかも効いてきます。
- 単独事故や自然災害のとき…相手方がいないため、代車費用は自分の契約でまかなえるかどうかの一本になります。
- 他にも車があるとき・ほとんど乗っていないとき…問46の例では認められなかった側に挙げられています。無理に請求を前提にせず、費用の見通しを先に立てておくほうが安全です。
- 修理が長引きそうなとき…骨格に及ぶ修理や部品の取り寄せがあると期間は延びます。代車をどれくらいの期間借りることになるかにくわえ、補償される日数に上限が設けられている場合もありますので、あわせてご確認ください。
当店での実際の進め方
当店は工場代車のご用意が基本です。お客様がご自身の契約の他車運転特約を使って運転していただく形になるため、ご契約に他車運転特約が付いていることが必要になります。レンタカー特約が付いているご契約であれば、レンタカーで対応できる場合もあります。どちらになるかは契約内容によって変わりますので、保険会社へご連絡いただく際にあわせてご確認いただけると、お預かりの日程を決めやすくなります。
整理すると、工場代車をお使いいただく場合はご自身の他車運転特約、レンタカーで対応する場合はレンタカー特約、という対応関係になります。前者は「借りた車を運転する間の補償」、後者は「代車にかかる費用」の話で、記事の前半と後半がそのまま当てはまります。
当店は損害保険会社の指定工場ではない独立した立場で、元請けとして保険会社と直接やり取りをしてきました。年間500台超のお車をお預かりするなかで、「代車の話を先に詰めておかなかったために、修理の着手が数日ずれてしまった」というご相談は珍しくありません。損傷の確認・お見積り・保険会社への画像や書類の提出まで当店でお手伝いできますが、保険金の請求そのものは契約者であるお客様が行うものですので、代車の可否についても契約者ご本人からご確認いただく形になります。
相談と現車確認は無料です(作業を伴わない、保険会社提出用のお見積り書の作成は有料になります)。保険を使った修理の全体像は保険修理について、お預かりまでの手順は修理の流れ、当店の立場については選ばれる6つの理由をご覧ください。
よくあるご質問
他車運転特約は、契約すれば必ず付いているものですか
日本損害保険協会の問18では自動付帯特約として挙げられていますが、同じ問18に「すべての保険会社で取り扱っているわけではありませんし、内容も異なることがあります」との但し書きがあります。付いているかどうか、また補償される方の範囲は、ご加入の保険会社にご確認ください。
借りた代車をぶつけてしまったら、どうなりますか
問18が挙げる他車運転危険補償特約の支払内容は、対人賠償責任・対物賠償責任・人身傷害保険(または自損事故保険や無保険車傷害保険)に準じるとされており、車両保険は挙げられていません。借りた車自体の損害がどう扱われるかは契約によって異なりますので、お借りになる前に保険会社へご確認ください。
代車費用は必ず相手方に請求できますか
いいえ。問46は、請求できるのは代車費用が不法行為責任における「損害」にあたると認められる場合に限定されるとしています。実際に費用が生じたこと、その車が使えないと具体的に困る事情があることが前提になります。
修理期間はどれくらいかかりますか
損傷の範囲と部品の入荷状況で変わります。骨格に及ぶ修理や、部品の取り寄せが必要な場合は長くなります。お預かりの前におおよその見通しをお伝えしますので、代車が必要な期間の目安としてお使いください。修理と買い替えで迷われている場合は経済的全損と言われたら、保険を使うかどうかで迷われている場合は保険を使うと等級はどうなる?もあわせてご覧ください。
出典:日本損害保険協会「損害保険Q&A」問18・問46
保険が使えるか、まずは無料でご相談ください
中野区江原町の板金塗装専門店・フジバンキン保険修理センター。創業60年超・年間500台超。保険会社とのやり取りも状況とご希望に応じて代行します。無理な勧誘はいたしません。
メールで相談する
/ お電話 03-6908-0655(受付 9:00〜17:30・昼休みあり)



